社会福祉法人を設立する際には、次の事項を慎重に決定する必要があります。決定にあたっては、認可要件に影響を及ぼす部分もあり、またこのホームページに掲載されていない要件もありますので、専門家と事前に相談をされることをお勧めします。
1.名称
社会福祉法人の公共性から、法人及び施設の名称は、個人名、団体名等から引用したものは認められません。また、同一都道府県内で同じ名称を用いることもできません。(東京都の場合、他県で使用されている名称も極力使用しないよう指導されています。)なお、法人名と施設名は異なる名称を使用しなければなりません。
(例) | ○ | 法人名:社会福祉法人いろは 施設名:特別養護老人ホームほへと |
X | 法人名:社会福祉法人いろは 施設名:特別養護老人ホームいろは (法人名と施設名が同一のためNG) |
2.所在地
原則として、施設の所在地が社会福祉法人の事務所の所在地となります。
なお、法人の事業活動の場所が広範囲にわたる場合は、地域ごとに支部を設け、「従たる事務所」とすることができます。
3.設置
社会福祉法人には、6名以上の理事と2名以上の監事を設置しなければなりません。なお、次の(1)から(4)に該当する者は、役員になることができません。
*役員の欠格事由*
- 成年被後見人又は被保佐人
- 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又は社会福祉法の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなるまでの者
- 前号に該当する者を除くほか、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
- 社会福祉法人法第56条第4項の規定による所轄庁の解散命令により解散を命じられた社会福祉法人の解散当時の役員
上記のほか次の3点にも注意が必要です。
- 関係行政庁の職員が法人の役員となることは差し控えること。
- 実際に法人経営に参画できない者を、役員として名目的に選任しないこと。
- 地方公共団体の長など、特定の公職にある者が、慣例的に理事長や理事に就任したりしないこと。
<理事>
理事は法人内部の事務を処理すると同時に、法人の代表でもあります。理事会は、法人の業務執行機関です。
【ア】 定数は6名以上。
【イ】 各理事と親族等特殊の関係がある者※が、一定数を超えないこと。
- 理事の定数
- 特殊関係人の人数
- 6名〜9名
10名〜12名
13名以上 - 1名
2名
3名
- (この数を超えて選任することはできない)
※ 親族等の特殊の関係のある者とは次のような方をいいます。
- 当該役員と親族関係にある者
具体的には(1)6親等内の血族、(2)配偶者、(3)3親等内の姻族 - 当該役員と婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻と同様の事情にある者
- 当該役員の使用人及び当該役員から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
- b又はcの親族で、これらの者と生計を一にしている者
- 当該役員が役員となっている会社の役員、使用人及び当該会社の経営に従事する他の者並びに当該会社の使用人であって、役員と同等の権限を有する者
- a〜dの者と同族会社の関係にある法人の役員及び使用人
【ウ】 その法人に係る社会福祉施設の整備又は運営と密接に関連する業務を行う者が理事総数の3分の1を超えないこと。(例:その社会福祉施設を建設する建設会社の者や、その社会福祉法人から委託を受けて介護サービスを提供する会社の者など)
【エ】 社会福祉事業についての学識経験者または地域の福祉関係者が含まれていること。
社会福祉事業についての学識経験者とは
- 社会福祉に関する教育を行う者
- 社会福祉に関する研究を行う者
- 社会福祉事業又は社会福祉関係の行政に従事した経験がある者
- 公認会計士、税理士、弁護士等社会福祉事業の経営を行う上で、必要かつ有益な専門知識を有する者
地域の福祉関係者とは
- 社会福祉協議会等社会福祉事業を行う団体の役職員
- 民生委員・児童委員
- 社会福祉に関するボランティア団体、親の会等の民間社会福祉団体の代表者等
- 医師、保健師、看護師等保健医療関係者
- 自治会、町内会、婦人会及び商店会等の役員などその者の参画により施設運営や在宅福祉事業円滑な遂行が期待できる者
【オ】 社会福祉施設を経営する法人は、施設経営の実態を法人運営に反映させるため、1人以上の施設長等が理事として参加すること。ただし、評議員会を設置していない法人の場合は、施設の職員である理事は、理事総数の3分の1を超えない範囲とする。
<監事>
監事は法人の監査機関です。
【ア】 定数は2名以上。
【イ】 監事のうち1名は財務諸表を監査しうる者、1名は社会福祉事業についての学識経験者または地域の福祉関係者であること。
財務諸表を監査しうる者とは
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 会社等の監査役及び経理責任者等
社会福祉事業についての学識経験者とは
- 社会福祉に関する教育を行う者
- 社会福祉に関する研究を行う者
- 社会福祉事業又は社会福祉関係の行政に従事した経験がある者
- 公認会計士、税理士、弁護士等社会福祉事業の経営を行う上で、必要かつ有益な専門知識を有する者
地域の福祉関係者とは
- 社会福祉協議会等社会福祉事業を行う団体の役職員
- 民生委員・児童委員
- 社会福祉に関するボランティア団体、親の会等の民間社会福祉団体の代表者等
- 医師、保健師、看護師等保健医療関係者
【ウ】 他の役員と親族等特殊の関係がある者ではないこと。
【エ】 その法人の社会福祉施設の整備または運営と密接に関連する業務を行う者ではないこと。
【オ】 その法人の他の職務を兼任することはできない。(理事、評議員、職員など)
<評議員・評議員会>
社会福祉法人は原則として、理事定員の2倍を超える評議員から成る評議員会を設置しなければなりません。これは、社会福祉法人が民主的で適正な事業運営を図るために規定されたものです。ただし、次の事業のみを行う社会福祉法人については、必須ではありません。
【ア】 都道府県又は市町村が福祉サービスを必要とする者について措置をとる社会福祉事業
【イ】 保育所を経営する事業
【ウ】 介護保険事業
- 評議員会の機能
評議員会は原則としてこれを諮問機関とし、法人の業務決定にあたり、重要な事項についてあらかじめ評議員会の意見を聴くことが必要です。また、役員の選任も評議員会において行います。 - 評議員の選任要件
評議員は、役員に準じた選任要件が求められます。また、社会福祉事業の経営は地域との連携が必要なことから、評議員には地域の代表者を加えることが定められており、一方、利用者の立場に立った事業経営を図るために、利用者の家族の代表が加わることが必要とされています。
4.資産について
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うために必要な資産を備えなければなりません。(社会福祉法第25条)社会福祉法人は、社会福祉事業という公益性の高い事業を安定的、継続的に経営していくことが求められているため、特に財政面において、確固とした経営基盤を持っていることが求められます。
必要とされる資産の基準
- 社会福祉事業を所定の基準に従って行うのに必要な施設を所有していること、又はその目的を達成するように使用できる使用権が確実に設定されていること。
- 事業経営に必要な最低限の運用資産があること。また、これを確実に生み出すことができる財源があること。
資産の要件は、基礎財産・施設建設に運営に必要な資金・寄附金に分けられます。基礎財産の要件は、その法人の事業の内容によって異なります。
<基本財産の要件>
- 社会福祉施設を経営する法人
社会福祉事業を行うために直接必要なすべての物件について所有権を有していること、又は国若しくは地方公共団体から貸与、若しくは使用許可を受けていることが必要です。なお、社会福祉施設の不動産のすべてが国または地方公共団体から貸与、若しくは使用許可を受けている場合(=社会福祉施設の資産のなかに自己保有資産が全くない場合)には、1000万円以上に相当する資産(現金、預金、確実な有価証券または不動産に限る)を基本財産として有していなければなりません。また、都市部など土地の取得が極めて困難な地域においては、土地に限って、国若しくは地方公共団体以外の者から貸与を受けることは差し支えないとされていますが、この場合には、事業の存続に必要な期間の地上権又は賃借権を設定し、かつ、これを登記しなければなりません。 - 居宅介護事業(児童・母子家庭・寡婦・父子家庭・老人・身体障害者・知的障害者・精神障害者)を行う場合
居宅介護事業を目的として法人の設立を行う場合は、次の(a)及び(b)の要件を満たしていれば1000万円以上に相当する資産(現金、預金、確実な有価証券または不動産に限る)を基本財産とすることで足ります。- 5年以上にわたって、居宅介護事業の経営の実績があるとともに、地方公共団体からの委託、助成、介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者の指定又は身体障害者福祉法、知的障害者福祉法もしくは児童福祉法に基づく指定居宅支援業者の指定を受けていること。
- 一つの都道府県の区域内においてのみ事業を実施すること
- 地域・共同生活援助事業を行う場合
地域・共同生活援助事業を目的として法人の設立を行う場合は、次の(a)及び(b)の要件を満たしていれば1000万円以上に相当する資産を基本財産とすることで足ります。- 5年以上にわたって、地域・共同生活援助事業の経営の実績があるとともに、地方公共団体からの委託、助成、介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者の指定又は身体障害者福祉法、知的障害者福祉法もしくは児童福祉法に基づく指定居宅支援業者の指定を受けていること。
- 一つの都道府県の区域内においてのみ事業を実施すること
- 介助犬訓練事業又は聴導犬訓練事業の経営を目的とする場合
れらの事業を目的として法人の設立を行う場合は、次の(a)及び(b)の要件を満たしていれば1000万円以上に相当する資産を基本財産とすることで足ります。- 5年以上にわたって、当該訓練事業の事業所の経営の実績があるとともに、訓練事業について地方公共団体からの委託または助成を受けているか、あるいは過去に受けていたことがあること。
- 一つの都道府県の区域内においてのみ事業を実施すること
- 社会福祉施設を経営しない法人
社会福祉施設を経営しない法人は、設立後の収入を欠く恐れがあるため、設立時において事業継続を可能とする財政基盤を有することが必要です。原則として1億円以上の資産を基本財産としていなければなりません。ただし、委託費等で事業継続に必要な収入が安定的に見込める場合は、法人の安定的運営が図られるものとして所轄庁が認める額の資産とすることができます。
<施設建設及び運営に必要な資金>
社会福祉法人は、基本財産以外に下記の資金を現金・預金等で準備しておかなければなりません。
- 運転資金
年間事業費の12分の1以上に相当する額、障害者施設等自立支援給付費制度の対象となる事業を主として行う法人にあっては12分の2以上、介護保険法上の事業を主として行う法人にあっては、12分の3以上 - 建設等自己資金
必要とする額 - 法人事務費
必要とする額(最低100万円以上)
<法人設立時の寄附金>
- 社会福祉法人設立に際して寄附が予定されている場合には次の要件を満たさなければなりません。
- 書面による贈与契約がなされていること。
- 寄附者の所得能力、営業実績、資産状況等から、その寄附が確実になされることが証明できること。
- 建設資金として借入金を予定する場合には、償還計画を立てるとともに、返済が無理なく行われるものでなければなりません。また、寄附金により返済を予定する場合には、次の要件を満たさなければなりません。
- 上記(1)の要件を満たしていること。
- 個人の寄附金については、年間の寄附額をその者の年間所得額から控除した後の所得額が、社会通念上その者の生活を維持できると認められる額を上回っていること。
- 原則として、完済時(10〜20年後)においても寄附できる年齢であること。また、寄附の承継者を必ず置き、同様とすること。
5.社会福祉法人の定款
定款は社会福祉法人の根本法であり、「社会福祉法人定款準則」に沿って作成します。定款の記載事項には、必要的記載事項と任意的記載事項とがあり、必要的記載事項は、そのうち一つでも記載を欠くと定款自体が無効となります。
<必要的記載事項>
- 目的
- 名称
- 社会福祉事業の種類
- 事務所の所在地
- 役員に関する事項
- 会議に関する事項
- 資産に関する事項
- 会計に関する事項
- 評議員会を置く場合には、これに関する事項
- 公益事業を行う場合には、その種類
- 収益事業を行う場合には、その種類
- 解散に関する事項
- 定款の変更に関する事項
- 公告の方法
- 設立当初の役員
6.認可申請先
都道府県知事または指定都市もしくは中核市の長が所轄庁となります。(ただし、その行う事業が2以上の都道府県の区域にわたった上で、1つの地方厚生局の所管内の場合は各地方厚生局長、2以上の地方厚生局にまたがる場合は厚生労働大臣が所轄庁となります)
所轄庁が厚生局長又は厚生労働大臣の場合も、都道府県知事または指定都市もしくは中核市の長を経由して申請書を提出します。
7.登記
認可書が到達した日から2週間以内に、社会福祉法人設立の登記を行います。これにより、法人が成立することになります。(根拠:社会福祉法第28条、第34条)
登記をする事項は次のとおりです。(根拠:組合等登記令第3条)
- 登記項目
- 登記内容
- 1.目的及び業務
- 定款に定める目的及び事業。(公益事業や収益事業を行う法人においてはそれらも登記すること。)
- 2.名称
- 定款に定める名称
- 3.事務所
- 定款に定める事務所
- 4.代表権を有する者の氏名、住所及び資格
- 代表権を有する者の氏名等。それ以外の役員の氏名等を登記する必要はありません。
- 5.資産総額
- 認可書に添付された財産目録の正味財産
- 6.存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
- 7.代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め
また、設立後に目的及び業務、名称、事務所、代表権を有する者の氏名、住所及び資格に変更が生じた場合には2週間以内、資産総額に変更を生じた場合は事業年度終了後2ヶ月以内に変更登記が必要です。(根拠:組合等登記令第6条)